●○● 天声人碁 ●○●


2003年9月

◎2003/09/29 「名人戦第2局 依田名人が二連勝

 9/24・25、新潟市で打たれていた第28期囲碁名人戦七番勝負第2局は
白番の依田紀基名人(37)が挑戦者の山下敬吾棋聖(25)に中押し勝ちし、
2連勝とした。第3局は10月1、2の両日、島根県出雲市の武志山荘で。

 挑戦者の猛攻を名人が巧みにしのぎ、自在な打ち回しで完勝した。

 解説の小林覚九段は「右辺白56の踏み込みなど名人の頑張りと、挑戦者に
力を出させないうまさが光った。挑戦者は序盤に左辺で黒7を抜かれたのと、右
辺の黒57が堅すぎたのが惜しまれる」と話した。

                    ----朝日新聞より抜粋----

         ◇  ◇  ◇  ◇

依田名人の「戦上手」が山下棋聖の「豪腕」を封じる展開のようでした。
1、2局とも山下棋聖は本来の重厚な攻めが発揮できず、不本意と思っているで
しょう。このまま終わるとは思いませんが、気持ちを切り替えて山下棋聖らしい熱
い碁を見せてほしいと思います。

プロの対局では局後に検討(感想戦)があります。検討が好きな棋士の筆頭は
林海峰九段でしょう。深夜あるいは明け方までというケースも何度かあるようです。

この検討は敗者の気持ちの整理という意味もあるかと思います。負けた直後は悔し
い気持ちをどこにぶつけていいのやら・・・
それを検討で少しづつ冷やして、平常心に近づける棋士の知恵でしょうか。

ただ、今回の名人戦2局ではほとんど検討はなし。山下棋聖は自分の不甲斐なさに
怒っているのでしょうか・・・

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は新潟市。朝日新聞の第二局観戦記(第一譜)に面白い内容が載っ
ていましたので紹介します。

【謙信と信玄】
 頂上決戦は巌流島から戦国時代の名将、上杉謙信を生んだ新潟へ 舞台を移した。
北九州・小倉での第一局ではどちらが武蔵か小次郎かは
判断のつかないところだっ
たが、今回は謙信とそのライバル武田信玄が
両対局者の棋風と重なり合う。

 見通しのはっきりしない戦いは極力避け、優勢と判断すれば素早く兵を 引く合理的
戦法の名人は信玄タイプ。一時期初手「天元」や「5の五」を
愛用していた山下の大胆
さとスキを逃さない鋭い踏み込みは、謙信の別称
である「越後の飛竜」にピッタリだ。

 ただし、ひとつだけ結びつかないものがある。天下取りにあと一歩及ば なかった謙信、
信玄とは反対に、依田と山下はすでに名人と棋聖。今期
七番勝負を制したほうを碁界
天下人と呼んでも差し使えないだろう。

  
  −−−以下省略−−−  (松浦孝仁)


◎2003/09/22 「王座戦、張本因坊が挑戦者に」

 第51期囲碁王座戦(主催・日本経済新聞社)本戦トーナメント決勝、張栩
本因坊対加藤正夫九段戦が9/18、東京・日本棋院で打たれ、白番の張本
因坊が3目半勝ちし、タイトル挑戦を決めた。
張本因坊の王座戦挑戦は初めて。王銘エン王座との五番勝負は10月30日
の東京での第1局を皮切りに全国を転戦する。

 張本因坊は23歳。山下敬吾棋聖、羽根直樹天元、高尾紳路八段と並んで
「若手四天王」と呼ばれ、ここ1−2年は7割を超える高い勝率を維持している。
今期王座戦でも羽根天元、依田紀基名人ら強豪を下して勝ち上がってきた。

 今年夏、加藤本因坊(当時)に挑戦して念願のタイトル奪取に成功したばかり。
王王座とは一昨年の本因坊戦七番勝負を争い、そのときは当時の王本因坊が
4勝3敗でタイトル防衛に成功している。

                    ----NIKKEI-NETより抜粋----


           ◇  ◇  ◇  ◇

本因坊戦と同じ顔合わせとなった王座戦挑戦者決勝、またも張本因坊に軍配が
上がりました。
中盤までは黒番・加藤九段の優勢のようでしたが、張本因坊の強靭な粘りに屈し
た格好となりました。

加藤九段、本因坊戦でもそうでしたが後半での息切れが感じられました。
やはり年齢的なハンディもあるのでしょうか、同年代の加藤九段の奮戦を
期待していたのですが残念です。

10/13には早碁の阿含杯決勝でまた「張:加藤」の決戦が見られます。
この対局、中年の星・加藤九段の頑張りに期待しています。


◎2003/09/16 「名人戦第1局 依田名人が先勝」

 9/10・11、北九州市小倉北区で打たれていた第28期囲碁名人戦七番勝負
第1局は黒番の依田紀基名人(37)が挑戦者の山下敬吾棋聖(25)に7目半
勝ちした。第2局は24、25の両日、新潟市のホテル新潟で。

 初日に序盤から積極的に仕掛けて驚かせた依田名人だったが、2日目は一
転柔軟な打ち回しを見せて快勝。硬軟取り混ぜた持ち味がよく発揮された初戦
となった。

 解説の王銘エン王座は「序盤にポイントを挙げた名人が局面を終始リードし、
終盤の正確さも素晴らしかった。挑戦者は上辺で終盤、やや大事に打ちすぎて
後退したのが惜しまれる」と話した。

                    ----朝日新聞より抜粋----


           ◇  ◇  ◇  ◇

依田名人が、山下棋聖の豪腕を巧みにかわし快勝のようでした。山下棋聖とし
ては持ち前の重厚な攻めが発揮できるような局面にもって行けず、不完全燃
焼の一局のように思われます。

第二局は山下棋聖の先番、激しい戦いが予想されますが、両者の熱闘を期待し
ましょう。

           ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は北九州市小倉北区、今年5月の本因坊戦第二局も同じ場所で
打たれました。

NHK大河ドラマ「武蔵」はこれから宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で決戦す
るところですが、武蔵は小倉の細川家に仕官の時期があったのですね。

その小倉で名人戦第一局が行われたわけですが、こちらの方も巌流島の対決に
劣らぬ注目度のようです。どちらが武蔵か小次郎かわかりませんが・・・


◎2003/09/10 「アマ本因坊戦・原田実さんがV7」

 8/22〜24、東京・市ケ谷の日本棋院会館で行われた第49回全日本アマチュア
本因坊決定戦全国大会は24日、準決勝、決勝を行い、原田実さん(67)=招待・
神奈川=が、平岡聡さん(32)=東京=に先番1目半勝ちを収め、6年ぶり7回目
の優勝を飾った。原田さんは67歳7カ月で、史上最年長のアマ本因坊になった。
優勝回数は菊池康郎さんの13回に次ぎ、単独2位の記録。

 優勝した原田さんは「決勝は最後まで負けていたと思っていました。強くなろうと
いう気持ちはもうなく、打ちたい手を打って負けたらしようがないという心境で大会
に臨んでいました。ツイていたとしかいいようがありません」と喜びを語った。

                         ----毎日新聞HPより抜粋----

     ◇  ◇  ◇  ◇

原田さん、67歳でのタイトルとはすごいですね。若い時からの鍛錬と長年の経験
が優勝につながったのでしょうね。

原田さんは自身の成績もさることながら、後進の指導や普及活動にも力を入れアマ
碁界を支えておられます。

     ◇  ◇  ◇  ◇

原田さんは私が所属していた企業の大先輩ですが、もう20年近く前になるでしょう
か、「事業所対抗全社囲碁大会」というのがあり、1〜2度拝見したことがあります。

当然、主将で碁の内容は格の違いを感じさせる横綱相撲の様相でした。
でも雰囲気は柔和で高潔な紳士というイメージでした。

後進の指導と同時に自身の対局も、まだまだ頑張ってほしいと思っています。


◎2003/09/03 「第24回少年少女囲碁全国大会」

8/31(日)12時〜14時、NHK教育テレビ「決定!こども囲碁名人・第24回少年少女
囲碁大会」が放映されました。

▽小学生の部決勝「日野立誠×岡田量」
▽中学生の部決勝「日野大地×谷村康成」

【解説】(九段)武宮 正樹、
【司会】(アマ六段)林 芳美

    ◇  ◇  ◇  ◇

結果は日野大地・立誠の兄弟が中学生の部と小学生の部、両方を制しました。
両親の表情が映っていましたが、うれしいでしょうね。

小学生名人となった日野立誠君、「立誠」という名はお父さんが「王立誠プロ」を意識
してつけたそうです。

子供の名前って、親が思い入れしている人の影響が結構ありますよね。
先輩のN氏は武宮正樹九段が好きで、子供に「正樹」とつけたと言ってました。
そこそこ碁は打てるようになったようですが・・・

    ◇  ◇  ◇  ◇

小学生の部決勝では岡田君が短手数で投了しました。
解説の武宮九段は「プロでもこの段階では投げない、心がピュアなんでしょうね」
と言ってました。

「いさぎよく投了する」これは日本独特の美意識でしょうか。
欧米では「最後まで諦めない(ネバー・ギブアップ)」の精神が強いようです。

私もいさぎよく打ちたいと思っていますが、なかなか投了できないんですよね。
勝負にこだわらず、いい碁を打ちたいと常々思っているのですが・・・


◎2003/09/01 「碁聖戦第5局、依田名人が3勝2敗でタイトル奪取」

 8/27、東京の日本棋院会館で打たれた第二十八期碁聖戦五番勝負第五局は、
依田紀基名人が小林光一碁聖に白番3目半勝ちし、通算3勝2敗でタイトル 奪取
に成功。


 最終局決戦にもつれ込んだ碁聖戦は挑戦者の依田紀基名人が中盤の見事な
打ち回しで快勝、2連勝のあと2連敗の悪い流れを断ち切って碁聖位に返り 咲いた。

 依田は北海道岩見沢市出身、安藤武夫七段門下。1980年入段、93年九段。
タイトル獲得は碁聖4、名人3、十段2など計32。
 敗れた小林は無冠となった。

                    ----NIKKEI-NETより抜粋----

     ◇  ◇  ◇  ◇

最終局にもつれ込んだ碁聖戦、依田名人が熱戦を制し、名人・碁聖の二冠となり
ました。
小林光一九段が負け50代のタイトル保持者は無くなりました。残念ですね。

依田名人・碁聖の特長といえば形勢判断の明るいところでしょうか。優勢と見たら
あくまで手厚くスキのない打ち方で寄り切ります。
ただ、不利の場合の粘りがイマイチのような気がしますが・・・

     ◇  ◇  ◇  ◇

碁聖戦が終わり、舞台は秋の陣・名人戦に移ります。(9/10に北九州市で開幕)

3期名人位を保持している依田名人に挑戦するのは今一番旬の棋士・山下敬吾
棋聖。名人戦リーグを破竹の8連勝で挑戦権を獲得し、この大一番に乗り込んで
きます。
碁聖戦に続き、名人戦も両者北海道出身の棋士ですね。

名人の風格さえただよう充実の依田名人と新進気鋭の豪腕・山下棋聖。
どんな碁になるか楽しみです。


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