●○● 天声人碁 ●○●


2003年11月

◎2003/11/25 「天元戦第2局/羽根天元が勝ちタイに」

 囲碁の羽根直樹天元(27)に山下敬吾棋聖(25)が挑戦する第29期天元戦
5番勝負の第2局は、20日午前9時から滋賀県長浜市で打たれ、黒番の羽根
が4目半勝ちし、1勝1敗のタイとした。第3局は27日、長崎市で行われる。

 序盤は山下が左上隅で、続いて右上隅でも厚みを築いて上辺に大模様を構築。
一方の羽根は着実に地を稼ぎ、黒の実利、白の厚みとはっきり分かれる展開と
なった。

 羽根は上辺で白の大模様に手を付け、サバキに成功して優位に。中終盤も右
上隅、上辺と大きなヨセを打ち、中央の白模様も減らして勝勢を決定的にした。

<羽根直樹天元の話>
 布石はいいとは思っていなかった。右下隅や左下隅など全部生きるまで不安
でしたが、先手で生きることができました。大ヨセが打てて勝てるかと思いました。

<山下敬吾棋聖の話>
 大模様の碁でしたが、甘すぎました。どう攻めていいか分かりませんでした。
中終盤も逆転のチャンスはなかったと思います。

        ----北海道新聞より抜粋----

         ◇  ◇  ◇  ◇

羽根天元は前週、棋聖戦挑戦者決定戦で趙治勲二十五世本因坊を破り、山下
棋聖への挑戦を決めています。天元戦、棋聖戦ともにフルセットとなれば十二番
勝負の長丁場となります。楽しみなシリーズですね。

一方の山下棋聖は前週、高梨聖子さん(高梨聖健八段の妹で、テレビ囲碁棋戦・
竜星戦の聞き手)との入籍を果たしたそうです。
前夜祭で「結婚して弱くなったといわれないよう、いい碁を打ちたい」とのこと。
気持ちはわかりますよね。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は滋賀県長浜市。以下「長浜観光情報」からの紹介文。

「美しい自然と豊な歴史に彩られたまち、長浜。」
 西には日本一大きな琵琶湖、東には日本百名山に数えられる、滋賀県一の高峰・
伊吹山が聳えます。春には百花咲き誇り、夏は琵琶湖で水遊び。秋は野山の紅葉
を愛で、冬はスキーを楽しむ。長浜には、日本の原風景とも呼べる風景が、今なお
残っています。

 歴史で特筆すべきは豊臣秀吉公。秀吉公が湖畔に城を築き、城下町の基盤を整え
ました。”長浜“と名づけたのも秀吉公と伝わっています。

 長浜の歴史は一つの時代に限定されないさまざまな顔を持つのが特徴です。江戸
時代に入ると大通寺の門前町、北国街道の宿場町、琵琶湖の港町、生糸や浜ちりめ
んの商工業都市として、発展を遂げました。明治時代には全国に先駆けて文明開化
を取り入れ、平成には新たなガラス文化を核として、まちづくりに取り組んでいます。

 長浜のまちには、こうした豊かな自然や歴史にはぐくまれた香り高い独自文化が、
今も脈々と息づいています。

行ったことはありませんが、ゆっくりと訪ねてみたい所ですね。
行くとしたら季節は春かな。


◎2003/11/17 「王座戦第2局/張本因坊が雪辱」

 11/6、神戸市で戦われていた第51期王座戦五番勝負の第2局は黒番の
張栩本因坊が王銘エン王座に中押し勝ちし、対戦成績を1勝1敗のタイにし
た。第3局は27日、静岡県熱海市で行われる。

 張が足早に実利を稼ぎ、王が中央の模様で対抗する展開のなかで、シノギ
を得意とする張は大模様に深々と打ち込み、危なげなく生きを確保。
 立会人の坂口隆三九段や解説の後藤俊午九段らからは「黒が打ちやすい」
との声があがった。王は秒読みに追われながら、粘りをみせたが及ばなかった。

             ----2003/11/7、日経NETより抜粋----


        ◇  ◇  ◇  ◇

張本因坊、公私とも充実して絶好調ですね。この一局、王座のパワーを緻密な
ヨミで逃げ切ったようです。

張本因坊は詰碁を作るのも一流で、扇子に自作の詰碁を描いるとのことです。
詰碁はあらゆる変化を想定して作る必要があり、実戦にもよい影響を与えてい
ると思われます。

        ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地「神戸」で思い浮かべるのは「阪神・淡路大震災」。1995年1月
ですのでもう8年以上になります。
「備えあれば憂いなし」といいますが、地震に対してはなかなか難しいですね。

囲碁の場合も備えは重要です。攻めることに夢中になって気が付いたら自分の
足元が崩れていた。私の負け碁はいつもこのパターンです。



◎2003/11/11 「小林女流本因坊、3勝1敗でタイトル防衛」

 囲碁の小林泉美女流本因坊(26)に矢代久美子五段(27)が初挑戦していた
第22期損保ジャパン杯女流本因坊戦五番勝負第4局は東京都千代田区の
日本棋院会館で打たれ、小林女流本因坊が黒番中押し勝ちし、通算3勝1敗
でタイトル防衛に成功、女流名人位と合わせ2冠を堅持した。
 小林女流本因坊の女流本因坊位は3期連続3度目。矢代五段の初のタイト
ル獲得はならなかった。
             ----2003/10/30、日経NETより抜粋----


       ◇   ◇   ◇   ◇

小林女流本因坊、強いですね。棋風は父親の小林光一九段に似て地に辛く、
戦いにも強い。しばらくは女流最強の座は続きそうですね。

一方の矢代五段、残念でした。力では負けていなかったと思うのですが、小林
女流本因坊の方が戦上手の面で一歩上回ったという印象です。これも経験の
差でしょうか。

       ◇   ◇   ◇   ◇

10月末の新聞で張栩(ちょう・う)本因坊(23)と小林泉美女流本因坊・名人が
来春結婚するニュースを見ました。
タイトルホルダー同士の囲碁界最強のカップル誕生と噂されています。

小林女流本因坊の母、故禮子七段は小林光一九段と結婚後はほとんど専業主
婦で囲碁界から離れた存在でした。小林女流本因坊はどうでしょうか。

最近では青木喜久代八段や知念女流棋聖など子育てをしながら活躍している
女流プロも多くなっており、小林女流本因坊もこの路線でがんばってほしいと思
います。

それから小林女流本因坊、故禮子七段ともに年上女房となります。
偶然か、必然か・・・いずれにしてもおめでたい話です。



◎2003/11/06 「王座戦第1局/王銘エン王座が先勝」

 2連覇を目指す王銘エン王座(41)に2冠達成を狙う張栩本因坊(23)が挑む
第51期囲碁王座戦五番勝負の第1局は10/30日東京都港区で戦われ、先
手黒番の王王座が張本因坊に中押し勝ちし、タイトル防衛に向けて幸先良
いスタートを切った。

第2局は11月6日に神戸市で行われる。

 王王座と張本因坊の両者がタイトル戦で激突するのは2001年の第56
期本因坊戦以来2年ぶり2度目。この時はフルセットの末、王王座が4勝
3敗で本因坊位を防衛している。この日の対局で両者の通算成績は7勝
7敗のタイとなった。

             ----2003/10/30、日経NETより抜粋----

        ◇  ◇  ◇  ◇

この一局、王王座が張本因坊の大石を仕留め快勝のようでした。今回の
王座戦は台湾出身の棋士同士です。

王銘エン王座の魅力は独特の囲碁感覚で、最近発刊された「ゾーンプレ
スパーク」でその内容が説明されています。

概要は大きく模様(ゾーン)を張って、相手を小さく押し込む(プレス)という
ことでしょうか。何となく感じはわかるのですが、実戦ではむつかしいですね。

この時期、囲碁のタイトル戦は目白押しです。「名人戦」が10/23に終わっ
たばかりですが、10/29は「女流本因坊戦第3局」、10/30には「王座戦」と
「天元戦」の第1局が打たれています。

タイトル戦に登場する棋士はもちろん、囲碁ファンにとっても忙しい毎日で
しょう。


◎2003/11/04 「天元戦第1局/山下棋聖が先勝」

 羽根直樹天元(27)に旭川出身の山下敬吾棋聖(25)が挑戦する囲碁の
第29期天元戦五番勝負第一局は10/30、北海道富良野市で打たれ黒番
の山下が1目半勝ちし、まず一勝を挙げた。
第二局は11月20日、滋賀県長浜市で行われる。

<山下敬吾棋聖の話「計算できなかった」> 
 上辺の攻め合いで見損じがあり、右辺とのフリカワリは損をしました。最後
まで計算ができず、勝ちになったと思ったのは小ヨセに入ってからです。

<羽根直樹天元の話「チャンスあった」> 
 上辺と右辺のフリカワリは得をしたと思いました。終盤は細かく、チャンス
はあったと思いますが…。

        ----北海道新聞より抜粋----


         ◇  ◇  ◇  ◇

現時点での国内7大タイトルは以下のようになっています。

◆棋聖 山下敬吾
◆名人 依田紀基
◆本因坊 張栩
◆十段 王立誠
◆王座 王銘エン
◆天元 羽根直樹
◆碁聖 依田紀基

今回の羽根・山下戦、対戦成績は山下棋聖の8勝2敗と片寄っています。
この戦歴から見ると山下棋聖有利か・・・

「動の山下」、「静の羽根」といわれていますが、自分のペースに持ち込ん
だ方が有利でしょう。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は北海道富良野市、北海道へは行ったことはありませんが
富良野市で思い浮かぶのは「スキー」、「TVドラマ/北の国から」でしょうか。

「北の国から」は見てませんが、視聴率の高い人気のドラマですよね。主人
公演じるの田中邦衛さん、不器用な生き方の見本のようです。

最近は要領のいい人が重用され、不器用な(生き方)人が不遇の傾向にあ
ります。そういう見方ってどうかと思いますが・・・


☆「天声人碁」TOPへ