●○● 天声人碁 ●○●


2004年8月

◎2004/08/30 「世界王座戦 、決勝は常昊vs李世ドル」

 トヨタ&デンソー杯第2期囲碁世界王座戦の本戦トーナメント準決勝が8月27日、日本棋院で打たれ、
前回準優勝の中国・常昊九段(27)と韓国・李世ドル九段(21)が決勝に進出した。決勝三番勝負は来年
1月5日から名古屋市で行われる。

 中国の常昊九段と韓国の若手、崔哲瀚八段(19)との対局はコウ争いの絡んだ難しい戦いとなったが、
最後は常昊九段が中押しで制した。

 また、韓国・李世ドル九段と中国・孔傑七段(21)との若手同士の対決は終盤、李世ドル九段の勝負手
が奏功し、大石を取って逆転勝ちした。

    ◇   ◇

準々決勝は8/25、韓国、中国が2人ずつ準決勝にコマを進めた。日本勢は、ただ1人勝ち残っていた
結城聡九段(32)が敗れ、第1期に続いてベスト4に誰も残れなかった。
 前回優勝の韓国・李昌鎬九段(29)は21歳の中国・孔傑七段に半目負けを喫し、連続優勝の夢を絶
たれた。また、結城九段は韓国の19歳、崔哲瀚八段に終盤、逆転負けした。

                                     [日経棋界トピックスより抜粋]

         ◇  ◇  ◇  ◇

日本主催の「世界王座戦」、今回もベスト8止まりと残念な結果になってしまいました。

7月に行われた「第17回世界囲碁選手権・富士通杯」では依田名人が決勝まで進みましたが、韓国の
朴永訓五段(19)に敗れ準優勝でした。

国際棋戦での日本不調、要因は色々あると思いますが私は国民の囲碁に対する認知度が低いことだ
と思います。
逆にいえば韓国、中国の好調さは囲碁への関心度を急上昇させた結果だと思います。

韓国では李昌鎬(イ・チャンホ)はじめ囲碁のタイトルホルダーは国民的ヒーローとして誰でも知っています。
日本ではどうでしょう。街で羽根棋聖・依田名人・張本因坊などとすれ違って何人の人が囲碁の有名人と
気付くでしょうか。

         ◇  ◇  ◇  ◇

オリンピックで日本は過去最多のメダルを獲得、水泳の北島康介など日本人なら誰でも知っています。

囲碁もオリンピックの注目度までは無理でしょうが、より関心を高めてもらえるよう囲碁関係者やマスコミの
努力が必要と思います。


◎2004/08/25 「碁聖戦第4局、依田碁聖が防衛」

 8/12日、石川県野々市町で打たれた「第29期碁聖戦・五番勝負」第4局は依田碁聖が挑戦者・
山田規三生八段に白番4目半勝ちし、通算3勝1敗でタイトル防衛に成功した。

 依田碁聖の碁聖位は2期連続5度目。山田八段は精彩を欠き、第2局から3連敗した。

<依田紀基碁聖の話>
 昼の打ちかけ時は、あまりいいとは思っていなかった。
 このところハードスケジュールで頑張っているわりに結果が出ていなかったので(防衛という結果
 は)うれしい。

<山田規三生八段の話>
 最初は少しいいかと思ったが、終盤にどう打っていいのか分からなくなった。
 シリーズを通して全然駄目でした。

                    [2004年8月12日/共同より抜粋]


         ◇  ◇  ◇  ◇

依田碁聖の貫禄勝ちということでしょうか。過密な対局日程の中での防衛戦をよくしのいだと思い
ます。9月になると名人戦7番勝負(挑戦者は張栩本因坊)が始まります。本因坊戦とは逆の立場
での戦いとなりますが、こちらも目を離せません。

一方、山田八段にとっては残念なシリーズとなりましたが、全体的には「らしくない」という印象でした。
もっと、のびのびと打った方がいいと思いますが、それを阻んだ依田碁聖の技が上回ったということで
しょうか。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局は石川県野々市町(ののいちまち)。金沢市に隣接した町で、昨年の碁聖戦第2局と同じ
ところです。

碁聖戦の主催は「新聞囲碁連盟」ということで、地方の新聞社が持ち回りで主催しています。今年の
対局は以下のようにおこなわれました。

・第1局 6月29日(火) 高知市「三翠園」 高知新聞社
・第2局 7月15日(木) 京都府綾部市「現長」 京都新聞社
・第3局 7月26日(月) 東京都千代田区「日本棋院会館」 新聞囲碁連盟
・第4局 8月12日(木) 石川県野々市町「文化会館フォルテ」 北國新聞社

野々市町といってもあまり知名度がありませんが、今後も定期的に碁聖戦を開催すれば「碁聖戦の
野々市町」として有名になるかもしれません。

         ◇  ◇  ◇  ◇

野々市町の紹介(野々市町HPより抜粋)

 古くから加賀の中心として歴史、文化を築いてきた野々市町は、石川県のほぼ中央に位置し、
交通の要衝として、また暮らしの拠点として、商業と近郊農業を中心に急速な発展を遂げ、合併
後8千人であった人口も今では4万人を超える県内一大きい町となりました。

 また、「じょんからの里」として古くからの文化を愛し続け、幼稚園から大学までを町内に有し、
教育文化の香り高い町として知られています。


◎2004/08/23 「2004/全国少年少女囲碁大会」

「文部科学大臣杯第1回小・中学生囲碁団体戦全国大会」 東京・日本棋院(8/2・3)
  ■東京Dチームが優勝

「第25回少年少女囲碁大会全国大会」 東京・日本棋院(8/3・4)
  ■小学生の部-優勝-金沢真くん(神奈川県・なでしこ小学校6年)
  ■中学生の部-優勝-日野大地くん(大分県・岩田中学校3年)

           (日本棋院HPより抜粋)


         ◇  ◇  ◇  ◇

夏休み恒例の「全国少年少女囲碁大会」が今年も開催されました。今年で25回になるそう
ですが参加者数は開催初期に比べますと飛躍的に伸びているようです。

これも「ヒカルの碁」の影響が大きいと思いますが、現時点がピークのように思います。
今後はいかに今の活況を維持していけるかが課題だと思います。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今年から県別の団体戦が開催されました。上位は東京周辺のチームが独占の状態でしたが、
これは囲碁教室などが整っているからでしょう。

来年は学校単位のチームにしたいということですが、地方では選手を揃えるのに苦戦しそうです。

         ◇  ◇  ◇  ◇

この大会からプロ棋士になる選手も多く、小学生優勝者の8割くらいはプロになっています。
(中学生は2割程度)

今後もこの大会が囲碁界全体の活況につながることを祈ります。


◎2004/08/15 「第59回終戦記念日」

今年で59回目となる終戦記念日、新聞やTVでの報道が少なくなったようです。
(アテネ・オリンピックの影響もあるんでしょうが・・・)

現在、戦後生まれは3/4を占めるそうですが戦争の歴史が風化しつつあるように思います。
私も戦争直後に生まれた世代ですが、この歴史的事実を忘れてはいけないと思っています。

「力=正義」が人の心をねじ曲げ、戦いに進むのでしょうか。でも、戦いは盤上だけにしてほし
いものです。そして、勝ち負けではない価値観が必要ではないかと思っています。

囲碁の世界では高段者も級位者もそれぞれのステージで楽しみながら、上昇意欲を持てば
よいと思います。


◎2004/08/06 「全国高校囲碁選手権全国大会2004」

 7月27〜29日、東京・市ヶ谷の日本棋院で高校選手権が行われた。

 頂点に立ったのはそれぞれ、団体戦男子が筑波大学附属駒場高校(東京)、女子が宮崎
学園高校(宮崎)、個人戦男子が高津昌昭くん(長野県・須坂東高校2年)、女子が下坂美織
さん(北海道・函館白百合学園高校2年)。

                  (日本棋院HPより抜粋)

         ◇  ◇  ◇  ◇

年々盛んとなる「囲碁の甲子園/全国高校囲碁選手権」、高校野球に劣らぬ熱戦が展開され
たようです。
個人戦は男女共二連覇で男子は長野県、女子は北海道と地方の選手ががんばっています。

高校野球と異なるのはチーム戦と個人戦ということでしょうか。
団体競技はチーム全員の総合力が結果となりますので、優劣がつけづらい面があると思います。
一方、個人競技の方は実力がそのまま結果につながりますので低位の選手はつらいでしょうね。

         ◇  ◇  ◇  ◇

高校野球では優勝した学校が日本一となりますが、高校囲碁は「アマ」の日本一ということに
なります。つまりプロ養成機関の院生が含まれていません。

高校囲碁優勝者からプロになった棋士もいますが、タイトル戦まで登場する棋士はまだまだと
思います。

院生は別としても、高校囲碁優勝の栄誉は大変なことだと思います。
今後の活躍を期待しましょう。


◎2004/08/04 「父が勝ち貫録示す・小林父娘対決」

 第43期十段戦の本戦トーナメント敗者復活戦1回戦は7/29日、東京都千代田区の日本棋院
で打たれ、小林光一・九段(51)と長女の小林泉美女流本因坊(27)によるプロ囲碁公式戦初の
「父娘対決」は、白番の小林光一・九段が中押し勝ちし、父の貫録を示した。

 2人は師弟でもあるが、公式戦以外でも意外に対局は少なく、「20局くらい」という。終了後は
小林光一・九段が「これはいい手だった。(夫で本因坊の)張栩君に教えてもらったんじゃないの」
と指摘するなど和やかな雰囲気で検討が行われた。

 これまでプロ囲碁では「父息子対決」が羽根泰正・直樹と泉谷政憲・英雄の2度あり、いずれも
息子が勝っている。

<光一九段のコメント>
 やっぱりちょっとやりにくかった。途中、結構危ない格好になっているんだ。久しぶりの対局だった
けど強くなってる。感心する手があった。やられてもおかしくはなかった

<泉美女流本因坊のコメント>

 父さんと打ってるだけでうれしかった。わたしにしては結構打てたんじゃないかな。すごく勉強に
なった。

                       [2004年7月29日/共同より抜粋]


         ◇  ◇  ◇  ◇

なんともほほえましい父娘対局で、情景が浮かんでくるようです。
現在、女流No.1の小林泉美女流名人・本因坊もかつての小林光一元棋聖・名人の壁は越えられ
なかったようです。
でもいずれは越える日がくることでしょう。そして、父もそれを望んでいることと思います。

         ◇  ◇  ◇  ◇

私の父親は近所の人と時々、自宅で対局していました。たまにお茶菓子が出るのでそれを目当てに
観戦し、そのうち私もルールを覚えたようです。

結局、父親とは一度も対局することなく他界し「父息子対決」は実現できませんでした。
今思うと、元気なうちに打っておけばよかったと悔やまれます。


◎2004/08/02 「碁聖戦第3局、依田碁聖2勝目、防衛に「あと1」」

 7/26、東京都千代田区五番町の日本棋院会館で打たれた「第29期碁聖戦」五番勝負第3局
は依田碁聖が山田規三生八段に黒番中押し勝ちし、対戦成績を2勝1敗としてタイトル防衛まで
あと1勝とした。
 第4局は8月12日、石川県野々市町の「文化会館フォルテ」で行われる。

<依田紀基碁聖の話>
 予定と全然違う碁になり、悪いと思っていた。最後まで(形勢は)細かい碁だと思って打っていた。

<山田規三生八段の話>
 中央を分断されてはまったく悪い。中央を連絡しなければならなかった。

                    [2004年7月15日/共同より抜粋]

         ◇  ◇  ◇  ◇

「分断とカラミ攻め」、私(アマ低段者)の好きな戦法ですがこの事にこだわって空振りすること
が多いようです。

問題は攻めの効力をいかに地にまとめるかですが、この技術・発想が貧困ゆえに勝てないの
だと思っています。

そのためには継続的な勉強・研究・訓練などが必要でしょう。(わかってはいるんですが・・・)

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局は東京・日本棋院、タイトル戦というと地方が多いのですが今回はお膝元での対局
でした。

対局者にとっては精神的にも、時間的にも楽ではないでしょうか。地方対局ともなれば、時間の
調整、前夜祭、打ち上げなど色々、気をつかうでしょうからね。

でも囲碁ファンにとって地元開催となれば、囲碁への関心もふくらみ普及面での効果も大きいで
しょう。


☆「天声人碁」TOPへ