●○● 天声人碁 ●○●


2004年10月

◎2004/10/29 「名人戦第5局:張本因坊勝ち、名人へあと1勝」

 10/21〜22、静岡県伊豆市で打たれていた囲碁名人戦七番勝負第5局は白番の挑戦者・張本因坊が
依田紀基名人に4目半勝ちした。

 第4局に続く連勝で通算成績を3勝2敗とし、初の名人位獲得にあと1勝と迫った。第6局は11月3、4
の両日、静岡県伊東市で。

 中盤まで手厚く打ち進めた本因坊がわずかに優勢に立ち、危なげなく逃げ切った。天王山での大きな
勝利。王座と合わせた三冠に肉薄した。

 解説の秋山次郎八段は「張本因坊は中盤までに細かいポイントをあげ、着実にゴールした。本因坊の
好局だろう」と話した。

                  (2004/10/23 朝日新聞より抜粋)

         ◇  ◇  ◇ 

張本因坊が堅実な打ちぶりで逃げ切って、名人奪取まであと一つとなりました。
一方、依田名人にも優位に立つ局面があったようですが、チャンスを逃しそのまま挽回できなかったようです。

野球の日本シリーズは第7戦までもつれ、結果は西武が〇●〇●●〇〇で優勝となりました。中日ファンの
私としては悔しいシリーズでした。

名人戦も第5局を終わって依田名人側からみると〇●〇●●と同じような経過をたどっています。この流れで
ゆくと依田名人があと2連勝して防衛となりますが、どうでしょう・・・?第6局以降が楽しみです。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は静岡県伊豆市。平成16年4月1日から修善寺町、土肥町、天城湯ヶ島町、中伊豆町が合併
して伊豆市が誕生したそうです。

伊豆市、伊豆半島の中心みたいですね。合併により住みやすくなれば結構ですが、プラス面とマイナス面があ
ると思います。

         ◇  ◇  ◇  ◇

   ★ 第5局の対局場所について以下「朝日囲碁Web」より抜粋

 第5局が行われている「鬼の栖(すみか)」は、伊豆・修善寺の一角にある料亭旅館。

 印象的な旅館名は、「芸術の鬼」「仕事の鬼」など、各方面の道を究めた「専門家=鬼」たちにゆっくり休養して
もらおうと、瀬戸内晴美(現・寂聴)氏の小説の題名からとったという。

 京都から移り住んだ人が多く、地名も京都に由来したものが多い修善寺の環境にあわせ、旅館内は京都を思い
起こさせる雰囲気を漂わせている。



◎2004/10/26 「ねんりんピック群馬2004/囲碁交流大会」

先日(10/16〜18)、「ねんりんピック群馬2004/囲碁交流大会」の役員として、会場の草津町に行ってき
ました。
全国から60歳以上の選手が83チーム/248名、2日間で4局対戦しチーム戦、個人戦を競う大会です。

私は審判員として参加しましたが、野球やサッカーのように微妙な判定があるわけではないので、担当ブ
ロック(22名)の対局を見守り、手合い時計の確認、勝敗の結果確認・報告等、進行が円滑にいくようサポ
ートするのが主な役割でした。

結果としては大会も順調に終わり、全国から参加した囲碁愛好者は「草津の紅葉・青空・温泉・囲碁・・・等」
を十分、満喫し帰られたことと思います。

この種のイベントで思うのは、準備委員などスタッフの苦労です。大会開催にあたっては、草津町はじめ関係
団体は一年以上も前から準備をしてきました。無事に終了し、本当によかったと思います。

草津町の町民憲章は「歩み入る者にやすらぎを、去りゆく人にしあわせを」だそうです。

微力ながら協力させていただいた私も、しあわせを分けてもらったような気がします。



◎2004/10/20 「名人戦第4局 、張本因坊勝ち再びタイに」

 10/13〜14、札幌市中央区で打たれていた囲碁名人戦七番勝負第4局は黒番の挑戦者・張本因坊が
依田紀基名人に7目半勝ちし、対戦成績を2勝2敗のタイとした。
第5局は10月21、22の両日、静岡県伊豆市で。

 本因坊は中盤非勢に陥りながらも、名人の一瞬のミスをとらえて2勝目を挙げ、第2局に続きタイにこぎ
着けた。

 2日目再開後、下辺のやや薄い手で形勢は白に傾いた。しかし本因坊は中央の切りから、
果敢なしのぎ作戦に出た。思い切った乱戦志向が名人のスキを誘ったか。本因坊は右上の白を鋭く攻め
立て、一挙に反転攻勢。そのまま大差で逃げ切った。名人は終盤「何やってんだ」と激しくぼやき続けた。

 解説の王銘エン九段は「名人は右上の死活を安易に考えていたようだ」と話した。

<依田名人の話>
 下辺の攻めをみて打てば負けようがなかった。この碁を負けるとは、ひどすぎる。

<張本因坊の話>
 下辺打ち込みの良しあしは全然分かってなかった。中央の切りでさらに悪くしたはずだが……。

                        (2004/10/14 朝日新聞より抜粋)

         ◇  ◇  ◇ 

張栩本因坊の乱戦志向が依田名人のスキを誘い、勝利につなげたようです。
一方の依田名人は優勢を維持できず残念でした。

依田名人の碁で感心するのは、捨石の妙です。今回のシリーズでも石を捨てる局面が多くありました。

私などザル碁党は石をとられるのが悔しいので無理を承知で逃げ回り、敗勢になるケースが多くあり
ます。

今後は依田名人にならい、捨石作戦を取り入れて打つように心掛けようと思います。
でも実戦になると、これが難しいですよね・・・

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は北海道札幌市。北海道出身の棋士は結構いるんですね。依田紀基名人、小林光一九段、
山下敬吾九段など実力者が揃っています。

東京など都会に較べ囲碁を学ぶ環境はよくないと思いますが、小学生のうちに東京に出て勉強したんですね。
遠くからきている分、中途半端では帰れないという覚悟が大成させたのでしょうか。



◎2004/10/15 「新人王戦第3局、溝上七段が初V」

 溝上知親七段と坂井秀至六段で争われていた第29期新人王戦決勝三番勝負の第3局が、10月6日、
東京・市ヶ谷の日本棋院「幽玄」の間で行われた。

 一勝一敗で迎えた最終局は、白番の溝上が必死の追い込みで逆転、半目勝ちし、若手棋士の頂点に
立った。溝上七段は今回の優勝で、依田紀基名人、小松英樹九段、山下敬吾九段、高尾紳路八段に次
ぎ、若手三棋戦すべてで優勝したことになる。

一方の坂井六段はニ連続半目負けで、関西棋院三人目の新人王は幻と消えた。

<溝上知親七段の話>
 今回、ニ、三局目はあきらめて打っていたのでニ連勝できたのはタナボタ。内容がひどくて、ぼくなんかが
 新人王になるのは申しわけないような・・・。

<坂井秀至六段の話>
 悔いの残る終盤戦でした。紛れようのない黒の半目勝ちを逃すとは、信じられません。

                    [週刊碁より抜粋]


         ◇  ◇  ◇  ◇

溝上七段、奇跡のようなニ連続半目勝ちでの優勝でした。溝上七段はTVの囲碁番組にも時々出ていま
すが、控えめというか、謙虚というか地味な存在です。少年少女大会の優勝から緑星学園、これからの
活躍が楽しみな棋士の一人です。

坂井六段、あと一歩のところで本当に残念でした。医師の道を捨て囲碁界に飛び込んだ異色の棋士。
囲碁一筋の棋士とのハンディを乗り越え、どの程度まで登りつめられるか注目されています。

         ◇  ◇  ◇  ◇

囲碁の新人王タイトル者はその後、ほとんどがタイトル保持者となっており、一流棋士への登竜門といっ
ていいでしょう。

一方、プロ野球の新人王はどうでしょう。結構、ケガに泣かされたりで消えていく人も多いようです。
若さと素質で華々しいデビューを飾る人、二軍から這い上がって活躍する人など色々ですが、やはり苦労
した人のプレーは味があるように思います。



◎2004/10/09 「75歳菊池さん、アマ囲碁選手権最年長で優勝」


 75歳の菊池康郎さんが世界アマ囲碁の日本代表に――。来年5月に名古屋市で開かれる第26回
JAL杯世界アマ囲碁選手権戦の日本代表決定戦は日本棋院で打たれ、決勝戦で菊池さんが今年の
日本代表・中園清三さん(54)に白番1目半勝ちした。

 優勝は5回目。自身の持つ最年長優勝記録を更新し「私も驚いている。みんな敬老精神を発揮してくれ
たのでしょう」。

 92年の世界アマで初優勝。国内ではアマ名人が最多の9回など大ベテラン。前棋聖の山下敬吾九段
らを育て「プロを指導するアマ」という珍しい存在でもある。

 「世界大会では中国や韓国の若い代表選手が相手なので、『とてもじゃないけど』の気分。でも、おじい
ちゃんでも頑張れるのが囲碁だと、世界に知らせたい」

                    (2004/10/02 朝日囲碁ニュースより)


         ◇  ◇  ◇  ◇

菊池さん、75歳の優勝とはすごいですね。やはり若い時の鍛え方が違うのでしょうか。

現在、囲碁国際戦では10代後半〜20代が席巻しています。特に韓国・中国は新旧世代の入れ替わり
が急激で、ベテラン勢は影が薄い状況です。

一方、日本勢はベテランが結構がんばっており、活躍の期間が長いようです。
イメージ的には「日本=棋道」と「外国=競技」の違いではないかと思います。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今年、群馬県では「ねんりんピック(10/16〜19)」が開催されます。こちらもベテランが活躍するイベント
ですが、「囲碁」も草津町で行われます。

参加者は全国から約250人で、私も役員として大会運営をサポートすることになっています。
「囲碁」と「草津」の良さをPRできればよいと思います。

         ◇  ◇  ◇  ◇

「ねんりんピック」とは?

 「ねんりんピック」の愛称で親しまれている「全国健康福祉祭」は、スポーツや文化・芸術活動など多彩
な催しを通じて、「高齢者を中心とする国民の健康の保持・増進、社会参加、生きがいの高揚を図り、ふれ
あいと活力ある長寿社会の形成に寄与する」ことを目的として毎年開催されている全国規模の祭典です。

「ねんりんピック群馬」HP



◎2004/10/05 「名人戦第3局 、依田名人が勝ち2勝1敗」

 9/29〜30、名古屋市で打たれていた囲碁名人戦七番勝負の第3局は黒番の依田紀基名人が、
挑戦者の張栩本因坊に中押し勝ちし、通算2勝1敗とした。第4局は10月13、14の両日、札幌市で。

 ヨセに定評のある本因坊にとって、終盤にさしかかる前の早い投了だった。

 検討陣から「意外な一手」と声の上がった中央下の封じ手に、名人が厳しく白を分断。だが、名人は
強攻はせず、地を稼ぎながら慎重に攻めた。

 やや黒リードのまま難解なヨセ勝負になるとみられていたが、本因坊のミスが出て、形勢が傾いた。

 解説の彦坂直人九段は「一見、大模様で行くとみせて、地でも打てる態度に出る、名人の自在さが際
立った。一時は黒の攻めが緩んで細かい形勢でしたが、本因坊は、自らのミスに戦意を喪失したのでしょう」
と話した。

<依田名人の話>
 1日目から、悪くないと思っていた。下辺で少し得をして優勢を意識した。

<張本因坊の話>
 完敗です。右下隅が生きていないなど、まずいことが多かった。

                        (2004/09/30 朝日新聞より抜粋)


         ◇  ◇  ◇  ◇

依田名人の柔軟な攻めに張本因坊のミスで決着したようですが、まだ投了には早いのではという人も
いたようです。

「自らのミスに戦意を喪失した」、私達ザル碁党でもありますよね。こういう自己嫌悪の心境の時は投げ
やりな着手となって一方的な敗戦となります。

上手と対戦しているとミスを引きずらないで、気持ちを切り替えてじっくりチャンスを待つような打ち方をし
ます。これが大切ですね。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は名古屋。中部国際空港、愛知万博など大きなイベントが続き元気な名古屋ですが、
野球では中日ドラゴンズがセリーグ優勝を果たしました。中日ファンの私としても嬉しいニュースです。

落合監督の「オレ流」が評価されていますね。囲碁とは関係ないですが落合監督の記事を紹介します。


  ☆☆ 以下 2004/10/02 朝日新聞より

「揺るがなかった座標軸」

 権力と呼ばれるものにおもねることを、落合博満はけっしてしない。それが彼の生き方の縦軸である。

 秋田工高ではほとんど練習に出なかった。映画ばかりを見ていた。東洋大は1年の8月に合宿をを飛び
出て中退した。封建的な上下関係に嫌気がさしたからだ。

 東芝府中への入社は臨時工員としてだった。朝8時から午後5時まで発電装置の回路盤を作った。ナイ
ター設備のないグラウンドをそれから走った。

 野球というスポーツへの愛情を横軸に据えて、監督に就任しても、その座標軸が全く揺らぐことはない。

 キャンプ初日に紅白戦を行ったことも、その延長線上にある。昨年までの実績をある種の権力として認め
ることをしない。ファームでくすぶっている選手のあきらめに似た感情をぬぐい去った。

 ペナントレース終盤はストライキ騒動と重なった。落合監督は井端弘和選手会長を呼んだ。

 「選手会として、徹底的に戦って来い。優勝や日本シリーズがなくなってもかまわない。世の中には、それ
以上に大切なことがある」

 選手のプライドが、経営者側に押しつぶされるのが、落合には耐えられなかった。

 オーナーとは、もちろん意見を異にする。それでも彼は選手を、ある種の権力から守ろうとした。他球団の
監督にはまねができなかった。

 揺るがない座標軸。リーダーとして最も必要で、しかし、最も難しい役割を落合博満は、こなしきった。



◎2004/10/02 「本因坊・女流本因坊夫妻、初の同日タイトル戦 」

 張本因坊と小林泉美女流本因坊(27)の本因坊カップルは9月29日、それぞれタイトル戦の対局に
臨んだ。タイトルを持つ棋士夫婦が同日にタイトル戦を打つのは囲碁界で初めて。

 午前9時、張本因坊は名古屋市での名人戦第3局で依田名人に挑み、小林女流本因坊は富山市での
女流本因坊戦第1局で挑戦者知念かおり三段(30)との防衛戦に臨んだ。張本因坊は本因坊、王座に
名人を加えて三冠を狙い、小林女流本因坊は4連覇を目指す。

 2人は28日、新幹線で東京駅を出発。夫は「タイトル戦は地方に出かけることが多く、同日対局の方が
『すれ違い』が少なくていい」、妻は「夫の対局をテレビやインターネット中継で見る時ハラハラするが、今
回は自分の対局に集中するので気楽です」。

 10月13日も夫は札幌で名人戦第4局、妻は東京で女流本因坊戦の第2局で同日対局の予定。

                        (2004/09/29 朝日囲碁ニュースより)

         ◇  ◇  ◇  ◇

夫は名古屋、妻は富山と両本因坊とも大変ですね。
プロ棋士の宿命といえばそれまでですが、心身とも休まる暇がないのではと心配します。

囲碁界も女性の進出が著しい昨今ですが、女流タイトル戦以外の国内一般棋戦では女流タイトル者
は現れていません。

男女どちらが優位という問題とは別に、生まれながらの特質が違うように思います。

アテネ・オリンピックの女子バレー監督・柳本さんがTV番組で「バレーの特訓時、女子選手はもう立上がれ
ないほどの状態でも『窓のカーテンが開いているので、閉めてきます・・・』、これは男子とはまったく考え方
が違うと感じた」といってました。

老若男女、それぞれの役割分担があるように思います。


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