●○● 天声人碁 ●○●


2004年11月

◎2004/11/24 「王座戦第2局、張栩王座2連勝、初防衛に王手」

 囲碁王座戦の五番勝負第2局は11月18日、山形県温海町で打たれ、黒番の張栩王座が3目半勝ち
を収めた。張栩王座は開幕戦から2連勝で、初防衛に王手をかけた。一方、無冠返上を狙っている山下
九段はあとがなくなった。

第3局は今月29日、東京・紀尾井町の赤坂プリンスホテルで行われる。勢いに乗った張栩王座が一気に
ストレートで初防衛を果たすのか、カド番に追い込まれた山下九段が踏ん張って1勝を返すのか。囲碁ファ
ンなら見逃せない一戦となりそうだ。

<張栩王座の話>
 序盤はだいぶ苦しかったです。左辺をしのいで、それでも苦しかったのですが、最後の方でちょっと良く
なったと思いました。
 (第3局に向けての抱負を聞かれ)また、いい碁を打てたら、と思っています。

<山下敬吾九段の話>
 最初は悪くないかなと思っていました。左辺でもう少し良くなる手があったようですが、ここでかなり地を
損してしまいました。
 (第3局に向けての抱負を聞かれ)開き直ってやるだけです。

             (2004/11/18、「日経、棋界トピックス」より抜粋)

         ◇  ◇  ◇

張栩王座の2連勝ですか、好調ですね。名人位を奪取して気分もいいところでしょう。
張王座は劣勢になっても相手に脅威を感じさせる強靭な何かがあるようです。
それが勝負師の強さでしょうか。

一方の山下九段、天元戦では羽根天元に2連勝して意気あがっていますが、張栩三冠には苦戦しています。
苦手意識があるのでしょうか。

         ◇  ◇  ◇

今回の対局地は山形県温海町の萬国屋。温海町の由来は温泉から溢れ出た温かな湯が、川に流れ込み、
日本海を温めたことだそうです。

庄内平野の南側に位置し、日本海に沿った1万人ほどのこじんまりした町で、温泉や山海の特産物など、自然
に恵まれた土地のようです。

温海町は訪れたことはありませんが独身時代、庄内平野の鶴岡や酒田を一人旅したことがあります。

先日、「隠し剣 鬼の爪」という映画を見てきました。この舞台となる架空の海坂藩は原作:藤沢周平の出身地
である庄内藩がモデルのようです。

監督:山田洋次、原作:藤沢周平の作品としては前作『たそがれ清兵衛』がありますが、時代・舞台設定など
似たところがあります。下級藩士のストイックな生き様が共感を呼びます。



◎2004/11/22 「石倉九段のNHK囲碁講座」

毎週日曜日の12時からNHK教育TVで囲碁講座を放送しています。現在は石倉九段の「上達の秘訣
教えます」という内容で初段クラスが対象のようです。

この中で石倉九段は「5つのK」が上達に欠かせないといっています。
「・感動・好奇心・考え方・形・繰り返し」の5項目です。

私なりにこの5項目について考えてみました。

・感動
  最近、感動することが少なくなりました。若い頃と較べ新鮮な気持ちで物事を見る意識が薄れた
  のでしょうか。
・好奇心
  感動と同様、気持ちが薄れているのは確かです。最近は碁の内容より、各種の囲碁大会やイベ
  ント、普及などに興味が移ってきています。
・考え方
  一進一退で一貫性がありません。
・形
  過去の経験則のみで自分のものになっていません。
・繰り返し
  持続力減退で、継続するのが億劫になってきました。

ということで上達には困難な状態ですが、あと一目はレベルアップしたいと思っています。
「楽して上達する方法」があればいいのですが・・・



◎2004/11/18 「天元戦第2局、山下連勝、天元まであと1勝」

 羽根直樹天元(28)=棋聖=に山下敬吾九段(26)=旭川出身=が挑戦している囲碁の第三十期
天元戦五番勝負第二局は11月十二日登別市登別温泉で打たれ、黒番の山下が一目半勝ち。二連勝
でタイトル奪取まであと一勝とした。
 第三局は二十六日、広島県因島市で行われる。

<山下敬吾九段の話>
  中央を切って行ったが、有効な手がなく悪くしてしまいました。右下隅で得をして難しくなったかと−。
勝ちが分かったのは小ヨセのところです。

羽根直樹天元の話
 中盤、左辺の白石の眼があやしくなりましたが、生きたところでは行けると思ったのですが−。
しかし後がまずかった。右下隅がひどく、どう打つか分かりませんでした。

         ◇◇  第1局  ◇◇

 天元戦五番勝負の第一局が11月4日岐阜市で打たれ、白番の山下が四目半勝ちし、先勝した。

<山下敬吾九段の話>
 途中は計算ができていなくて自信はありませんでした。よくなったと思ったのは最後の方で、下辺を
跳ね下がって少し残るかと思いました。

<羽根直樹天元の話 >
   中盤以降、攻めているつもりが、自分の方が薄くなってしまいました。中盤ノゾいたのが悪く、押し
上げられて薄くなりました。

             (三社連合「天元戦HP」より抜粋)

         ◇  ◇  ◇

山下九段の二連勝で天元位奪取の可能性が濃くなってきました。山下九段はこの天元戦と王座戦の
タイトル戦にダブルで挑戦しています。(10/29、王座戦第1局は張王座に敗退)
また、棋聖戦では11/8、挑戦者決定戦にのぞみましたが結城聡九段に惜しくも敗れました。

一方の羽根天元、今年は負越しのようで絶不調の状態です。昨年暮れから山下九段に天元戦、棋聖
戦と連覇したときの好調さがウソのようです。
早く立ち直って、タイトル戦を盛り上げてほしいと思います。

         ◇  ◇  ◇

天元戦第1局の対局地は岐阜市、長良川河畔の「岐阜グランドホテル」。

岐阜で思い起こすのは戦国時代の斎藤道三と織田信長でしょうか。織田信長が稲葉山城を占領し、
地名を井ノ口から岐阜に改めたそうです。

もうかなり前になりますが、長良川河畔の金華山・岐阜城を訪れたことがあります。ロープウェイで急峻な
山頂に登ったところのありましたが、眼下に長良川と岐阜市街が一望でき絶景だったのを覚えています。

         ◇  ◇  ◇

天元戦第2局の対局地は北海道登別市の登別温泉「第一滝本館」。

登別温泉、行ったことはありませんが北海道では有名ですね。地獄谷というのがあるそうですが、各地に
地獄谷というのがあります。

昭和初期、碁界の巨匠「呉清源」と「木谷実」が新布石を研究したのは「信州地獄谷温泉」でした。
この温泉を訪れると一目は強くなるといわれていますが・・・?



◎2004/11/16 「女流本因坊戦、知念三段が5期ぶり復位」

 小林泉美女流本因坊に知念かおり三段が挑戦していた第23期女流本因坊戦五番勝負第4局は、知念
三段2勝1敗の後を受けて11/2、東京都千代田区の日本棋院で打たれ、知念三段が白番2目半勝ちし、
3勝1敗でタイトル奪取に成功した。

 知念三段の女流本因坊位獲得は5期ぶり通算4度目。敗れた小林女流本因坊は4連覇ならず、女流名人、
JAL女流早碁の2冠に後退した。

<知念かおり新女流本因坊の話>
 上辺の地がまとまったので、少しいいかなと思った。第1局の内容が悪すぎたが、2局目以降は反省は
あるもののよく打てたと思う。

<小林泉美前女流本因坊の話>
 終盤に下辺で誤算があり、これが敗着になった。それまでは少しいいと思っていた。本当は5局目まで打
ちたかった。

             (11/2、日経「碁界ニュース」より抜粋)

         ◇  ◇  ◇

小林泉美前女流本因坊、残念でしたね。夫の張栩本因坊とダブル本因坊でしたのに。
夫は名人を奪取し3冠、妻は女流本因坊を失い2冠、合計5冠は同じのようです。
これからも夫婦でたくさんのタイトルを取っていくものと思われます。

知念新女流本因坊、がんばりました。知念さんはタイトル戦になると力を発揮します。
段位は三段ですが大勝負には強いですね。2児の母親としてこれからも活躍してほしいものです。

         ◇  ◇  ◇

今回の女流本位坊戦の対局地は第1局が富山市「富山第一ホテル」。
私自身、富山には登山の基地として何度か訪れました。剣岳や薬師岳など心躍らせて登ったものですが、
今の体力ではもう無理でしょうか。

第3局は岩手・花巻市「佳松園」。「花巻」、名前の響きが何ともいいですね。
紅葉の季節にゆっくり温泉でくつろいでみたい所です。



◎2004/11/09 「名人戦第6局:張本因坊勝ち、初の名人に」

 11/3〜4、静岡県伊東市で打たれていた囲碁名人戦七番勝負第6局は黒番の挑戦者・張本因坊が
依田紀基名人に1目半勝ちし、通算4勝2敗で初の名人位を獲得した。

 名人と本因坊の二冠達成は、趙治勲25世本因坊以来5年ぶり5人目で、史上最年少となる。王座も
加えた三冠保持で囲碁界の第一人者に躍り出た。

 カド番に追い込まれた依田名人は挽回することができず、史上3人目の5連覇はならなかった。これで
七大タイトルは碁聖のみとなった。

<張本因坊の話>
 「難しいと思っていた。最後の秒読みの中で、お互いに間違いがあったと思う」と第6局を振り返り、七番
勝負全体についても「内容的に負けていた。とくに第4局は全然だめだった」と話した。名人位獲得につい
ては「まだちょっと実感がない。今までどおり、一局一局を一生懸命にやっていきたい」と述べた。

<依田名人の話>
 「(第6局は)ちょっといいのではないかと思っていたが、難しかった。4局目を負けたのがひどかった」と
話した。

    ◇

 史上5人目の名人本因坊は坂田栄男23世本因坊、林海峰名誉天元、石田芳夫九段、趙治勲25世
本因坊に並ぶ快挙。
 さらに林名誉天元は師匠で、師弟で名人になったのは初めてのことだ。

                  (2004/11/05 朝日新聞より抜粋)

         ◇  ◇  ◇  ◇

張栩新名人が誕生しました。これで名人・本因坊・王座の三冠、囲碁界の勢力図が張栩新名人を中心
に回り始めているように思います。

一方の依田名人、残念でした。第4局の好局を落としたのが尾を引いたのでしょうか、内容的には負け
ていなかったと思います。

張栩新名人、史上5人目の名人・本因坊だそうです。この5人の中では、石田芳夫九段のタイトル戦登
場期間が短かったのが残念です。
大成するのが早過ぎたのでしょうか。でも石田九段は普及や解説・立合い等、色々な場面で囲碁界に
貢献しているのは間違いないですね。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は静岡県伊東市の「わかつき別邸」。大正から昭和にかけて活躍した若槻礼次郎元首相
が晩年を過ごした邸宅で、現在は旅館として使われているそうです。

若槻内閣の時代は関東大震災の2年半ほど後のようですが、この大震災は死者、行方不明者約15万人、
倒壊焼失家屋約70万戸、罹災者数340万人といわれています。

現在、新潟県中越地方は地震災害で大変な状況です。伊豆地方も群発地震で観光客が減少し、苦しい
時期があったようですが、今は平穏のようです。

地震は予想がつかず本当に恐ろしいですね。新潟県の被災者のみなさんが1日も早く元気で生活できる
ことを祈っています。



◎2004/11/05 「王座戦第1局、張栩王座が先勝」

 初防衛を狙う張栩王座に山下敬吾九段が挑戦する第52期囲碁王座戦の五番勝負第1局は10月29
日朝から福岡県筑紫野市で行われ、白番の張栩王座が中押し勝ちした。
第2局は11月18日に山形県温海町で行われる。

<張栩王座の話>
 序盤で少しうまくいったようで、少し打ちやすかったです。途中は難しいと思い、あまり優勢を意識する
ことはありませんでしたが、少し面白いと思っていました。

 第2局は、またいい対局ができるよう頑張りたいと思います。

<山下敬吾九段の話>
 全然、碁になっていませんでした。左辺がひどく、打ってからひどいことに気づいたのですが、どうしよう
もありませんでした。その後も全然ダメでした。

 今日の碁は忘れて(第2局へ向けて)気持ちを切り替え、また頑張りたいと思います。

             (2004/10/29、「日経、棋界トピックス」より抜粋)


         ◇  ◇  ◇

張栩王座は「名人戦」、韓国での「LG杯世界棋王戦」と過密日程のなかでの「王座」防衛戦。
一方の山下九段。今年3月に棋聖位初防衛に失敗、無冠に転落したがこの「王座戦」と次週行われる
「天元戦」の挑戦者に登場し、注目の一戦となりました。

両者がタイトル戦で激突するのは初めてだそうです。第1局は中央の攻防で山下九段に誤算があった
ようで、張栩王座が押し切りました。

両者の対戦を「山張(やまちょう)対決」と呼ぶそうですが、今後の日本棋界を背負うにふさわしいネー
ミングのような気がします。

過去、大相撲では「柏鵬時代」というのがありました。優勝回数などでは「大鵬」が圧倒していましたが、
荒削りな「柏戸」ファンも多かったと思います。

         ◇  ◇  ◇

今回の対局地は福岡県筑紫野市の二日市温泉にある純和風旅館「大丸別荘」。筑紫野市は大宰府市
の南に位置し、人口は約9万7千人の町だそうです。

筑紫野は「ちくしの」と読むんですね、私は「つくしの」と思っていました。ロマンを感じさせる筑紫野という
地名ですが、あまり特長が見えてきません。

地方の時代といわれますが、これからはその土地固有の個性が求められると思います。


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