●○● 天声人碁 ●○●


2005年9月

◎2005/09/29 「名人戦第2局/張栩名人が2連勝」


 福岡市で打たれていた第30期囲碁名人戦七番勝負の第2局(9月22日〜23日)は、張栩
(ちょう・う)名人(25)が挑戦者の小林覚九段(46)に241手までで白番6目半勝ちし、通算
2勝0敗とした。第3局は28、29の両日、甲府市で。

 攻勢に出た挑戦者に対して、名人は地合いで先行しながら強気のしのぎをみせ、勝ちきった。

 上辺から中央に伸びる白の一団の攻防が焦点となった2日目は、封じ手の黒57から開始。
挑戦者は攻めの調子で勢力を張り、検討室では一時「黒好調か」の声も出た。

 だが、白から右下を荒らしたのが大きく、黒は地合いで追いつきにくい形勢になった。細かい
勝負だったが、挑戦者は終盤に精彩を欠き、差が開いた。

 解説の小松英樹九段は「攻められても相手の弱みをつきながら巧みに応じる、名人の得意
パターンが出た一局でした」と話した。

<張名人の話>
 白84で中央が連絡し、左辺白に回ったあたりで少し打ちやすくなりました。

<小林九段の話>
 黒は右下を囲うべきでした。それならば、いい勝負だったかもしれない。

                   (朝日新聞より抜粋)


         ◇  ◇  ◇  ◇

張名人、苦戦の碁を粘り強く立ち回り、抜き去った一局のようでした。苦しい局面を辛抱して
チャンスを待つ、張名人ならでは強さの一面でしょうか。

一方の小林九段、中盤までは優勢との評価でしたが後半乱れたようです。26歳の名人と46
歳の挑戦者、スタミナの差もあるのでしょうか。

7番勝負では偶数局がポイントだといわれていますが、張名人の連勝でタイトル防衛に大きく
近づいたと思います。

小林九段は2連敗と遅れをとりましたが、このまま引き下がるわけにはいきません。名人リーグ
を勝ち抜いた意地を見せてほしいものです。

         ◇  ◇  ◇  ◇

タイトル戦では立会人がつきます。
本シリーズでは第1局:大竹英雄名誉碁聖、第2局:石田芳夫九段、第3局:武宮正樹九段と
木谷一門の大御所が務めています。

現在、立会人として出番が多いのは上記の3人の他、林海峯名誉天元、工藤紀夫九段、中部
の羽根泰正九段、関西の石井邦生九段など。

選ばれるのは過去の実績、人望などそれなりの格を備えた碁界のご意見番的存在でしょうか。
ただ当事者にとっては、「立会人ではなくタイトル戦の選手として登場したいものだ」と内心、闘志
を燃やしているのでは・・・



◎2005/09/27 「女流本因坊戦第1局/挑戦者の矢代が先勝」

 囲碁の知念かおり女流本因坊に矢代久美子五段が挑戦している第24期女流本因坊戦
5番勝負の第1局は9月22日、沖縄県那覇市で行われ、白番の矢代が1目半勝ちし、初の
タイトル奪取へ好スタートを切った。
 第2局は10月6日、福島市で打たれる。

                  (共同通信より抜粋)


         ◇  ◇  ◇  ◇

挑戦者の矢代久美子五段が劣勢の碁を盛り返し先勝のようです。
矢代五段は一昨年、小林泉美六段(前女流本因坊)に挑戦しましたが1−3で退けられました。
今回は初戦を制し、タイトル奪取に大きく前進ですね。

一方の知念女流本因坊、優勢の碁を逆転され悔しいでしょうね。
ただ、ここ一番の勝負に強い知念さんですから簡単にはタイトルは渡さないでしょう。

         ◇  ◇  ◇  ◇

矢代五段(東京都出身)もそうですが、この世代になると特に「師匠」を持たない棋士が増えて
います。木谷一門に代表されるような寝食を共にする内弟子生活はもう無理な時代かもしれま
せん。

知念女流本因坊は沖縄県出身で同郷の時本壱八段門下。地方出身者は「師匠」にお世話に
なるケースが多いようです。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は沖縄県那覇市。沖縄出身の棋士というと前述の時本・知念師弟、新垣武九段、
下地玄昭六段などが浮かびますが、いずれも血気盛んな力戦タイプのイメージです。
「沖縄は熱い!」



◎2005/09/21 「新人王戦第1局/金秀俊七段が先勝」

 金秀俊(キム・スジュン)七段と井山裕太四段の対戦となった第30期新人王戦決勝三番
勝負は9月15日、大阪・日本棋院関西総本部で第1局が行なわれ、金七段が中押し勝ち
し、初のタイトルへ大きく前進した。
第2局は9月23日(金)に東京の日本棋院で行われる。

                  (週刊碁より抜粋)


         ◇  ◇  ◇  ◇

先輩の金七段が堂々と寄り切った一局のようでした。

金七段は趙治勲門下の26歳。過去、若手の早碁棋戦決勝で5回も涙をのんでいるそうです。
力戦派の棋風でこれから第一線での活躍が期待されています。

韓国出身ということですが、自国では10代後半から20代前半の若手棋士が韓国のみならず
国際棋戦をも席巻している状況です。日本で修行した金七段としても複雑な心境でしょう。

         ◇  ◇  ◇  ◇

一方の井山裕太四段、いまいち思い切りのわるかった一局のようでした。

井山四段は関西総本部・石井邦生九段門下の16歳。少年少女囲碁大会では二連覇。
NHK杯では最年少出場(15歳)、今年の「阿含・桐山杯/早碁オープン戦」では決勝進出
(10/8、小林覚九段と対戦)など大活躍しています。
日本碁界「期待の星」といったところでしょうか。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は大阪・日本棋院関西総本部ですが10月から新しい場所に移転するそう
です。

昭和43年より大阪市北区西天満の地に大阪囲碁会館が設立されて以来37年間、会館を
拠点に囲碁普及して参りましたがこの度、会館老朽化にともない、関西総本部は関西の中
心地、梅田に移転する運びとなりました。      (日本棋院関西総本部HPより)


大阪の土地勘がないので「西天満」から「梅田」といわれてもピンとこないですが、より中心
地に近くなったということでしょうか。でもその分、家賃も高くなるのでしょうね。

碁会所経営も家賃を払いながらでは大変そうです。地方で囲碁を事業として運営するのは
難しでしょうね。

個人的には囲碁ファンがもっと楽しめて、快適な碁席があってもよいと思いますが・・・



◎2005/09/12 「名人戦第1局/張栩名人が先勝」

 神奈川県平塚市で打たれていた第30期囲碁名人戦七番勝負の第1局(9月7日〜8日)
は黒番の張栩(ちょう・う)名人(25)が挑戦者の小林覚九段(46)に135手までで中押し
勝ちした。第2局は9月22、23の両日、福岡市で。
 解説の大矢浩一九段は「名人の足早な打ち回しがさえ、充実を感じさせる一局でした」と
振り返った。

<張名人の話>
 1日目、上辺で、うまく石を捨てることができて、少し打ちやすくなりました。

<小林九段の話>
 封じ手を見て、負けたと思いました。序盤、左上白18は51にツメるんでした。

                   (朝日新聞より抜粋)

         ◇  ◇  ◇  ◇

張栩名人が序盤の捨石作戦で優勢とし、以降は手堅い打ちまわしで第1局を白星で飾り
ました。本因坊戦で失冠し、この名人戦では不安な面もあったと思われますが、本局は終
始局面をリードしスキのない一局のようでした。

一方の小林覚九段、久しぶりのタイトル戦登場で力が入り過ぎたのでしょうか、石に伸び
がなかったようです。短手数での終局となりましたが、第2局目以降は気持ちを切り替え
て臨んでくるでしょう。

衛星放送では武宮九段が解説していました。序盤、小林覚九段のブツカリの手が何手か
あり、「素朴な手、実戦的な手」と評していましたが、武宮九段としては「?」の手かもしれ
ません。また、張栩名人は中盤から優勢を意識し、手堅い「コスミ」の手が多かったようです。

         ◇  ◇  ◇  ◇

今回の対局地は神奈川県平塚市。「七夕まつり」で有名ですが、囲碁の町としても知られ
ています。

■「湘南ひらつか囲碁文化振興事業」

平塚に囲碁の木谷道場があったことから、木谷實九段や多くの弟子達の功績を讃え、囲碁
を平塚の特色ある文化として、市民の中に囲碁を普及させ、様々な囲碁イベントの開催を通
じて、全国から注目される、囲碁のまちを目指しています。
特に湘南ひらつか囲碁まつりにおける多面打大会は年々、規模を拡大し、北は北海道から
南は長崎まで全国から毎年約6500人の参加を得ています。

         ◇  ◇  ◇  ◇

昭和(戦後)の囲碁界は木谷一門の隆盛とともに歩んだような気がします。
大竹英雄・石田芳夫・加藤正夫・小林光一・趙治勲・武宮正樹・小林覚らの多くの棋士を育て、
囲碁との関わりが深い「平塚」、囲碁ファンとしてはうらやましい町ですね。



◎2005/09/09 「NHK大河ドラマ「義経」」

今年のNHK大河ドラマ「義経」を見ています。視聴率もまあまあで主演の「タッキー」こと滝沢
秀明の人気によるところも大きいのかもしれません。
また、私もそうですが歴史に興味をもっている人も、多く見ていると思われます。

先週の放送のクライマックスは平家が壇ノ浦で敗れ、安徳帝と一門の女子が神器とともに入水
するシーンですね。日本人はこういう滅びゆく者に対する美意識に弱いようです。潔さというので
しょうか。

ところで、囲碁では上手が白石を持ちますが、中国から伝来された頃は逆だったそうです。
それが鎌倉時代になり、源氏の旗は白(平家は赤)であることから白が上手になったとの説です。

本当かどうかわかりませんが、なるほどと思います。



◎2005/09/05 「全国少年少女囲碁大会/2005」

第26回少年少女囲碁大会 (日本棋院主催)東京・日本棋院8/2〜3

「目指せ未来の名人!全国から小中学生200名が頂点の座をかけ熱戦を展開!」

【結果】
〈中学生の部〉
  優勝・山下寛くん(静岡県・中郷西中2年)、準優勝・石井大輝くん(広島県・磯松中3年)
〈小学生の部〉
  優勝・夏冰くん(京都府・仁和小6年)、準優勝・大西研也くん(千葉県・新井小4年)

                       日本棋院HPより抜粋

         ◇  ◇  ◇  ◇

☆決定! こども囲碁名人
 〜第26回少年少女囲碁大会〜
8月28日(日)・教育・午後3時00分〜5時00分

 第26回少年少女囲碁大会・全国大会(日本棋院主催、NHK後援)が、今年も8月2、3日、
日本棋院
(東京・市ヶ谷)で開催される。本大会からはこれまで初代小学生名人横田茂昭
(現プロ九段)や山下
敬吾(現天元)、初代中学生名人青木紳一(現プロ八段)など、プロ棋界
でも活躍中の強豪を毎年輩
出する囲碁界の登竜門である。

 番組では、小学生の部・中学生の部それぞれのこども囲碁名人を決める決勝戦の対局を
解説を交え
ながら中継録画し、天才たちの熱戦を、夏休み最後の日に、同世代のこどもたち
に伝える。

                       NHK HPより抜粋

         ◇  ◇  ◇  ◇

先日(8/28)、NHKで「少年少女囲碁大会」を放送していました。
解説は高尾紳路本因坊、聞き手は林芳美さん。

過去の優勝者を紹介していましたが、一番印象に残るのは山下敬吾(現天元)でしょうか。
山下天元が小学2年生で優勝したときの決勝相手は小学4年の高尾本因坊で、優勝・準優
勝者のツーショット写真を披露していました。現在もその頃の面影が残る二人、いまは若手
四天王として囲碁界を引っ張るライバルとなっています。

         ◇  ◇  ◇  ◇

この大会で気になったのは服装・マナー。参加者は男子の数が多いのですが、日常遊んでい
るような普段着(カジュアル)が大半。
記録・読み上げの武宮四段、中島初段がキチッとした服装でいるのに対し、対局者である小中
学生の普段着姿は全国大会決勝戦という雰囲気ではないように思いました。

中学生決勝戦終了後の対局者のコメントも中学生らしからぬ「ふてぶてしさ」で、解説の高尾
本因坊の謙虚さと対照的でした。

私の想像ですが、この現象は「ヒカルの碁」の影響ではないでしょうか。
「ヒカルの碁」が少年少女の囲碁ブームを引っ張った功績は絶大なものがあり、そのストーリーは
大人でも感動ものですが、マナーや言葉づかいについてはマイナスの面もあったように思います。
漫画ですからある程度の誇張はやむ負えないところですが・・・



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