●○● 天声人碁 ●○●
2005年6月
◎2005/06/28 「本因坊戦第4局/張栩、1勝を返しカド番しのぐ」
6月20日から札幌市中央区で行われた第60期本因坊決定戦七番勝負の第4局は張栩
(ちょうう)本因坊が挑戦者の高尾紳路八段に白番中押し勝ちし、対戦成績を1勝3敗とした。
第5局は27、28日、埼玉県秩父市の美やま温泉で行われる。
序盤、右辺白10から一気に中央を押し切る趣向など、張が積極的に主導権を握ろうと打っ
て出た。カド番に追い込まれたことでかえって精神的に吹っ切れたのか。大胆な趣向から始
まって一局を存分に打った。
1日目の午後から右上で始まった戦いが勝敗を分けた。張が黒模様に打ち込み、高尾が攻
め立てる展開になったが、白が右辺を渡って白のリードがはっきりしてきた。
「そこまでしなくても十分なのに」の声が控室で何度も聞かれるほどの目いっぱいの頑張り
が最後まで続き、高尾も粘ったが、張の勝利は動かなかった。
張にとっては貴重な初勝利。この勝利をきっかけに反撃を開始したい。
<張本因坊の話>
右上の白は死ぬことはないと思っていたが、封じ手の局面ではいい勝負と思っていた。結局
少し得をしたと思うが、終始難しい碁でした。
<高尾八段の話>
封じ手のあたりでは、難しいが少し悪いと思っていました。右辺を渡られて負けだと思いまし
た。
ミスが多すぎました。
(毎日新聞より抜粋)
◇ ◇ ◇ ◇
張栩本因坊、やっと1勝を返しました。本局は本来の厳しい着手が冴え、高尾挑戦者を圧倒、
完勝ともいえる内容のようでした。
本局の直前、張栩本因坊は「テレビアジア選手権」で3連勝して優勝。この好結果がよい影響
を与えているのかもしれません。
一方の高尾八段、タイトルまであと1勝ということで力が入り過ぎたのでしょうか。
本来の力を出し切れなかったようです。
◇ ◇ ◇ ◇
今回の対局地は北海道札幌市、美味しいものがたくさんあります。海鮮類、ビール、ジンギス
カン、ラーメン・・・。
私が会社に入って間もない頃、サッポロラーメンが出はじめました。ご当地ラーメンのはしりだっ
たと思います。
夕方、都心で仕事をして帰りが夜の11時頃になる勤務が1年間ほど続きました。
寮生活だったため、帰っても食事がなく駅近くのサッポロラーメンを毎日のように食べていました。
味噌ラーメンと塩ラーメンを交互に食べていましたが、なぜか飽きることがなかったようです。
それから30年以上経ちますが体質がアッサリ系に変化した現在、あの濃厚な味は遠慮したいで
すね。
◎2005/06/25 「張栩王座、テレビアジア選手権で初優勝」
アジア3カ国・7人のプロ棋士が優勝を争う「第17回テレビ囲碁アジア選手権」が6月14日
から17日にかけて中国・北京で打たれ、張栩王座(25、名人・本因坊)が決勝戦で韓国の趙
漢乗八段(22)を下し、初優勝を決めた。張王座の国際戦制覇は今年4月の「LG杯世界棋王
戦」に続き2回目。
テレビアジア選手権は、「NHK杯(日本)」「KBS杯(韓国)」「CCTV杯(中国)」の3つのテ
レビ棋戦の優勝者・準優勝者と、昨年度優勝者の兪斌九段(中国)を加えた7人が参加する
トーナメント戦。張王座は1回戦で李昌鎬九段(韓国)、準決勝で兪九段を破って決勝戦に進
出した。
決勝では準決勝で依田紀基碁聖を破った趙九段と対戦、278手で白番3目半勝ちを収めた。
日本勢の同棋戦での優勝は第11回大会(1999年)の依田碁聖以来6年ぶり9回目となる。
(「日経 e-碁サロン」より抜粋)
◇ ◇ ◇ ◇
張栩さん、国内・国外で大活躍です。
国際戦では「LG杯世界棋王戦」に続き、この「テレビアジア選手権」で2冠、国内では名人・
本因坊・王座・NECカップ・NHK杯の5冠と一人で奮闘しているようです。
現在、本因坊戦を高尾紳路八段相手に戦っていますが、こちらは3連敗のあと1勝を返したと
ころで苦戦を強いられています。
国内外でこれだけ連戦が続くと体力的にも厳しいものがあると思いますが、日本碁会のリーダ
ーとしてこれからもがんばってほしいと思います。
張栩さんの対局時の服装はダーク系のスーツで精悍な印象ですが、ツメを噛むしぐさは子供っ
ぽい一面も見られます。
◇ ◇ ◇ ◇
張名人「勇気絞って誘った」 小林六段とおしどり対談
張栩名人と小林泉美六段の夫妻対談が「婦人公論」6月7日号に掲載された。張「最初、誘う
のにすごく勇気を振り絞ったんだよ」、小林「ずっと囲碁一筋だった私も、少し視野を広げてもいい
かな、と思い始めた頃で、タイミングが合ったのかな」。
(asahi.com 「囲碁」より抜粋)
ほのぼのとしたニュースですね。張栩さんの活躍に比べ、小林泉美六段は少し精彩がありませ
ん。
泉美さんのお母さん(故:小林礼子七段)は小林光一九段と結婚後、家事・育児に専念されてい
たようです。泉美さんもそんな後姿を見て育ったわけで、影響を受けているかもしれませんね。
◎2005/06/20 「井山裕太四段、高校進学捨て棋士に専念」
5月24日に16歳になったばかり。普通なら高校1年だが、自ら進学の道を捨て、プロ棋士
として腕を磨く毎日だ。12歳10カ月での入段は趙治勲十段に次ぎ、林海峰名誉天元と並
ぶ2番目に早い記録。
入段4年目にしてトップクラスの棋士とも互角に渡り合っている。韓国、中国に比べて若手
の育成が遅れていると言われる日本で、次代を担うホープとして周囲の期待は高まる一方
だが、本人は「実力はまだまだ」と至って冷静。
半面、「当面はNHK杯などで頑張りたい」「将来はリーグ入りを目指したい」と意欲満々だ。
幼さも残る顔立ちに似合わず、プロ棋士としての自覚は十分。タイトル戦線に躍り出る日も、
そう遠くはなさそうだ。
(中略)
――今年3月で中学を卒業しましたが、高校進学は考えなかったのですか。
祖母は高校に行ってほしかったようですが、両親は好きなようにしていいと言ってくれまし
た。
私自身は『悔いのないようにやりたい』という思いから高校に行く気はありませんでしたし、
かなり早い段階から、棋士に専念すると決めていました。
(後略)
(「日経 e-碁サロン」より抜粋)
◇ ◇ ◇ ◇
井山四段、日本の若手でもっとも期待されている俊英の一人ですね。
小学校2年、3年と「少年少女名人戦」で連続優勝しました。
先日のNHK杯戦では彦坂九段を見事破りました。この時の解説は師匠の石井邦生
九段でしたが、井山四段の勝ちが決まった時は自分のこと以上に喜んでいる様子
でした。
◇ ◇ ◇ ◇
棋士の能力は10代の訓練次第で決まるような気がします。歴代のタイトル保持者もほとんど
は高校にいってません。
日本では高学歴化が進む一方ですが、どうなんでしょう?
知識先行の昨今ですが「体で覚える」という感覚がもっと必要だと思います。
時代とともに「この道、一筋」という人が少なくなっていますが、日本のよき伝統は継承して
もらいたいものです。
◎2005/06/15 「本因坊戦第3局/高尾、3連勝し奪取にあと1勝」
6月8日から愛知県犬山市の明治村で行われた第60期本因坊決定戦七番勝負の第3局
は挑戦者の高尾紳路八段が張栩本因坊に白番中押し勝ちし、3連勝で初の本因坊獲得へ
あと1勝とした。
第4局は6月20、21の両日、札幌市中央区の札幌パークホテルで行われる。
明治村の由緒ある対局室での対戦は、高尾が持ち味の手厚さを生かした打ち回しでじわ
じわと寄り付き、2日目の午後には優勢に立った。夕刻になって張も終盤に鋭い追い込みを
見せ、細かい勝負になったが、高尾がわずかに残し、一気の3連勝を飾った。
高尾は冷や汗の勝利だったが、念願の奪取へあと1勝に迫った。逆に張はカド番に追い
込まれ、防衛には4連勝の逆転しかなくなった。第4局で逆転のきっかけを作れるかどうか。
<高尾八段の話>
封じ手は予定の行動だったが、ずっと難しい碁が続いていた。右上の黒を取ってよくなった
と思ったが、最後はひどいことをして負けにしたかと思ったが、残っていた。
<張本因坊の話>
本当は右辺黒35(18八)からはつぶれていただろうが、実戦はいい勝負になったと思って
いた。黒109(2十三)がさすがに大勢に遅れた原因で、上辺に手を入れておくのでした。
(毎日新聞より抜粋)
◇ ◇ ◇ ◇
高尾八段、破竹の3連勝で本因坊位に王手をかけました。自己の棋風を変えることなく泰然
自若の戦いぶりが勝利の女神を引き寄せているのでしょうか。
ただ、ここからの1勝が重く、遠いものだと思います。
一方の張栩本因坊、得意の黒番も落とし、防衛が苦しくなってきました。海外棋戦などの対局
も多く、疲労が蓄積しているのかもしれません。
囲碁ファンとしては本シリーズが4局で終わってはもったいない、張栩本因坊の意地をみせて
ほしいと思います。
◇ ◇ ◇ ◇
今回の対局地は愛知県犬山市の明治村内にある西園寺公望別邸「坐漁荘」 。
明治村は明治時代の建築物をや歴史資料を展示する博物館だそうです。
私が愛知県に住んでいた頃はまだ開村していなかったようですが、犬山市には何度か親父に
連れられて遊びにきた記憶があります。
当時は名鉄(名古屋鉄道)が集客を当て込んで、ミニ博覧会のようなものを何度か犬山で開催し
ており、それを目当てに来ていたんですね。
その後、家族で犬山を訪れたことはありましたが、明治村は子供が喜ぶようなテーマパークでは
なく、入らずじまいでした。機会があったら是非見ておきたいものだと思っています。
◇ ◇ ◇ ◇
◆ 西園寺公望別邸「坐漁荘」 ◆
旧所在地 / 静岡県清水市興津町
建設年代 / 大正9年(1920)
西園寺公望は、わが国の元勲として近代日本の政治上、重きをなした政治家である。公家出身
でありながら、その姿勢は終始平民主義を貫いていた。
坐漁荘は西園寺が政治の第一線から退いた後、別邸として大正9年に駿河湾奥、興津の風光
明媚な海岸に旧東海道に沿って建てられた。「坐漁荘」の名には、家にのんびり坐って魚をとる
という意味が込められていたが、実際には事あるごとに政治家の訪問が絶えなかった。
西欧への遊学経験をもつ彼らしく、後に洋間を座敷の横に増築している。
◎2005/06/09 「2005/小・中学校囲碁団体戦県大会」
「第2回文部科学大臣杯/小・中学校囲碁団体戦」の県大会が5月29日、前橋市の
総合福祉会館で行われた。
団体戦は選抜チームを結成した昨年と異なり、今回は学校対抗。3人1チームでトーナ
メントを戦った。
小学校の部と中学校の部各4チームが出場した選抜大会では、伊勢崎市立名和小と
高崎市立片岡中が8月17、18日に行われる全国大会への切符をつかんだ。
また、段級位認定大会には114人が出場し、日ごろの練習の成果を競った。
−−− 「2005/5/30 産経新聞」より抜粋 −−−
◇ ◇ ◇ ◇
今回は学校対抗ということで、選手をそろえるのに大変だったようです。
中学の代表校となったチームは6段が二人いたのですが、あと一人が見つからず急遽
初心者を特訓し15級で出場したそうです。
囲碁は個人競技ですがチームで戦うのも面白いですね。高校の団体戦では同じTシャツ
やハチマキで戦っている選手も見受けられました。
個人で目標をもって棋力向上をめざすのは当然ですが、チームのために貢献したいという
力も貴重だと思います。
◎2005/06/07 「本因坊戦第2局/高尾八段、2連勝」
5月26日から鳥取県湯梨浜町の望湖楼で行われた第60期本因坊決定戦七番勝負
の第2局は挑戦者の高尾紳路八段が張栩本因坊に先番4目半勝ちし、2連勝を飾った。
第3局は6月8、9日、愛知県犬山市の明治村で行われる。
両者とも秒読みに追い込まれ、力を振り絞った大熱戦。コウ争いに終始した300手を
超えた長手数の戦いは、高尾が制して開幕から連勝となった。
午後になってから両者ともにシャツの袖をまくり、文字通りの熱戦。外が闇に包まれ始
めた時にやっと終局となった。
連勝の高尾は初の本因坊獲得に大きく前進した。張が得意とするコウがからんだ乱戦を
制した意味は大きい。
張は連敗のスタートとなったが、第3局は得意とする先番。勝って逆襲に転じたいところ
だ。
<高尾八段の話>
左上のコウを解消したところでは少しいいかと感じましたが、真ん中を囲いに行ったのが
まずかったのか、途中は負けの流れになりました。右上のコウを解消してたぶん残ると思
いました。
<張本因坊の話>
最初のコウは、軽視していた手があって、実戦のようになってはおかしいと思います。
中央を黒203(10七)と打たれたあたりでいい手がありそうな気がしましたが……。
白226で右上227に打てば細かいのはわかっていました。
(毎日新聞より抜粋)
◇ ◇ ◇ ◇
高尾八段の2連勝と快進撃です。本シリーズ前までの対戦成績は高尾八段が6勝5敗と
勝ち越していますが、最近の成績は張栩本因坊の方が押しているようです。
現時点5冠の張栩本因坊を相手に、高尾八段の打ちまわしが冴えているというところでしょ
うか。まだ2局終わったばかりですが、今後の熱戦を楽しみにしています。
今回の対局、コウの連続で難解のようでした。われわれアマの対局でもコウはやっかいで
すね。特に上位者が不利な状況でコウを仕掛けてくると、不安になります。
ここで大切なのは「ムキにならないで、冷静に形勢判断」することでしょうか。
→ これがなかなかムズですね。
◇ ◇ ◇ ◇
今回の対局地は鳥取県湯梨浜町はわい温泉「望湖楼」。今年2月の棋聖戦第2局も同所で
行なわれました。この時は結城九段が羽根棋聖を破り、一勝一敗のタイに持ち込みました。
鳥取県で思い浮かぶのは「鳥取砂丘」、「大山(だいせん)」、「二十世紀梨」くらいでしょうか。
どちらかといえば目立たない県のイメージです。
「日本海側/山陰」というと地味な感じですが、質素で堅実な住みやすい土地柄かもしれま
せん。