上達のキーワード (2000年版)


●「定石」

「碁には決まり切った正しい打ち方があって、定石と呼ばれている」
という迷信ほど初級者を悩ませるものはない。ましてその数は数千、
数万もあると云われては、とても生きてるうちに覚え切れるものでは
ないと思ってしまう。だが、十人十色。人に決まり切った正しい生き方
などないように、碁にも決まり切った打ち方などないのである。


「定石を覚えて二目弱くなり」とも云う。定石は先輩たちの研究で、
今のところ最善の打ち方とされているものだが、常識や定石に縛られて
は、かえって、自分自身の可能性を減らしてしまうという教えだ。


「定石はないものと思え」である。ただ、そうは云っても初心の内は
碁盤はあまりに広く、どこに石を置いていいかさえ見当もつかない。


子供が親の背を見て育つように、とりあえず先輩の知恵を学ぶのもい
いだろう。基本定石30ほど覚えれば十分初段にはなれる。そして、覚
えたら忘れること。「定石」にこだわらず、自分で定石を作るぐらいの
気分で打てるようになれば、あなたはもう立派なひとかどの碁打ちであ
る。


なに?言われなくても覚えるそばから忘れている?ウム、見込みがあ
りますぞ!
              日本棋院「囲碁手帳」より



●「棋風」

「厚み派・実利派」、「武闘派・バランス派」また、それらが複雑にからん
で、一流棋士たちにはそれぞれ個性豊かな棋風というものがある。


棋風と言えば大袈裟だが、アマもまた上達のためには自分の個性を伸 ばすことが肝要だ。でも、伸ばすべき長所が分からない・・・という人 もいるか。その場合は素直に自分の弱点をチェックするのも一法。

弱点は、もしかすると重症の病気にまでなっているかも知れない。 例えば次のような・・・

★偏執性石取り病
★習慣性ダメヅマリ
★ケイマのツキダシ愛好症
★ヤキモチ性打ち込み病
★コウ嫌悪症
★石音過敏症
★投了拒否症
★ウワ手恐怖症・・・・

さて、あなたの病名は?エッ、どこも悪いところはない?それで、なか なか上達しないとすると、それはあなた、相当重い「無自覚性スジ悪症」 ですぞ!

ともあれ、自分の欠点を見極め、よい師匠について治して貰うこと、 そして、長所を伸ばす努力に早速取り掛って下さい。 日本棋院「囲碁手帳」より



●「岡目八目」

碁から出て、最も一般的に使われている言葉。はたから見れば、実力
以上に盤面を理解出来る?打てば3級だが、見ている時は5段ほどに
もなるらしい。だとすれば、ここに上達への最大のヒントがある。


つまり、打たずに見てるだけなら、あなたもいますぐ高段者になれる、 と言うこと。無論これは冗談だが、実際にプロの碁を見ているだけで 強くなった人もいる。

いろいろやっても、なかなか強くなれないという皆さん、是非お試し を。尤も、見るのはいい碁でなくてはいけませんよ。いい碁でなくて は・・・・ 日本棋院「囲碁手帳」より



●「壁」

碁を覚える。夢中になる。どんどん上達すれば苦労はないが、誰しも
ぶち当たるのが壁である。10級の壁、5級の壁、初段の壁、3段、
5段の壁。強くなるほど壁も厚くなるらしく、突き破るのはそのたび
に難しさを増すようだ。


しかし、壁に当たった時こそ、また一段の飛躍の時である。勇気を持っ て前進すべし。

但し頭から壁にぶつかって行くのは、頭の使い方として は下の下である。

ハシゴをかけたり、ヘリコプターをチャーターしたり、 壁を超える方法はいろいろある。

各自、工夫されんことを・・・・ 日本棋院「囲碁手帳」より



●「碁とは何か。アマ碁キチたちの碁呂合わせ哲学集。」

・碁は「語」だと7級嬢。碁を覚えていろんな世界の人と知り合えた。
・碁は「吾」だと3級氏。プロの教え、うわ手の忠告も何のその。
  あくまで我流のゴリゴリ流を貫いている。「吾思う、故に吾あり」
  立派な哲学だ・・・・?
・碁は「互」だと、2段さん。交互に一手づつ打つのが碁。自分だけ
  得をしたりは、出来ないものと悟り顔。

  そして碁は、やはり何よりも「娯」であるらしい。数千年の昔、中国
  で生まれた知的ゲームの王様は、日本で花開き、今や「GO」ゲーム
  として世界中で娯しまれるものとなった。

  ん?誰ですか「いくらやっても 強くなれない。碁を覚えたのが「誤」
  だった。」などとボヤいているの は・・・・

              日本棋院「囲碁手帳」より



●「手談」

 碁には古来さまざまの別称がある。”幽玄”、”忘憂”、”爛柯”そし
て ”烏鷺、”橘中の楽しみ”など、それぞれに碁の面白さ、奥深さを表現
している。
 中でも”手段”というのはいい。人種、国境、老若男女の区別なく、心
を通じさせることができる碁の素晴らしさが端的に言い尽くされている。
 
 左様、碁は勝負を争う以上に人と人、心と心をつなぐゲームなのだ。
だから、ネエ諸君!間違っても対局相手を叩きのめそうとか、つぶしてや
ろうなどと思ってはいけない。
 やたらに”待った”をしたり、石をジャラジャラさせて相手の思考を邪
魔してもいけない。まして形勢有利と見て相手の顔にタバコの煙を吹きか
けるなど言碁道断である。

 互いに礼を尽くして、相手の良さを引き出して行く。そんな境地で碁が
打てたら、世界は平和に・・・イヤ、碁会所だけでも、もっとステキな場
所になるんだけどナア・・・

              日本棋院「囲碁手帳」より




●「元気」

  碁は頭のスポーツ。「老いては碁にし給え」という新しい諺も出来、
ボケ防止にも効果的との評判だ。元気な老後は誰しもの願い。しかし、
「ボケ防止だけでは囲碁もかわいそう」だ。

  因みに「元気」とは広辞苑によると「天地の間に広がって、万物生成
の根本となる精気」という意味があるそうだ。大人も子供も、もっと
もっと何かを生み出す積極さで囲碁を考え直したいものである。

              日本棋院「囲碁手帳」より



●「うわ手・した手(1)」

 「4目以上は碁ではない」などと、した手と打ちたがらないうわ手。
反対に強い相手をイヤがるした手。よく見かける碁会所風景だが、双方
大いに問題有り。
          
 誰しも弱い時があって強くなったはず・・・4目以上がイヤなら、早くした
手を互先の棋力まで引き上げるよう、優しい指導をうわ手には望みたい。
  そして”負けて覚える相撲かな”負けを恐れていては何事も上達はしな
いのですよ、した手さん。

 とは言っても、あまりヒドイ目に会い続けると、うわ手恐怖症になるのも
事実。怖いうわ手の退治法を教えましょう。
 タカボウズというお化けがいます。暗い夜道に現れて、突然目の前で
グングン大きくなるタカボウズ。怖い!と思うとますます大きくなる、その
化け物は、エイ!とばかりに見下ろせば、今度はグングン小さくなるとい
います。
         
 自分より背の高いお化けを、どうやって見下ろすか。そこに多少の問
題はありますが、怖いうわ手の退治法・・・少しは参考になりましたね。
ネ、ネ!
              日本棋院「囲碁手帳」より



●「うわ手・した手(2)」
 うわ手・した手と言っても一時の仮の姿。いつその身分が逆転しない
とも限らない。でも、今現在はハッキリ違いがあるのも確か。その違い
を並べてみると・・・

イ)うわ手はスジで打ち、した手はイジで打つ。
ロ)うわ手はイジが悪く、した手はスジが悪い。
ハ)うわ手は捨て石を喜び、した手は石取りを喜ぶ。
ニ)うわ手は苦しくならないように考え、した手は苦しくなってから
  考える。
ホ)うわ手は負けまいと打ち、した手は勝ちたい勝ちたいと打つ。
ヘ)うわ手の石はピシッ、パシッと響き、した手の石はチグ、ハグと
  鳴る。
ト)うわ手は投げ場を知り、した手はトドメを刺されても打つ。
チ)うわ手は勝って、尚反省し、した手は負けて相手を罵る。

               ・・・さて、あなたは、どのタイプ?

              日本棋院「囲碁手帳」より



●「為悟」
 碁は勝負か、芸術か。勝負芸術だ、と言った人もいる。単なるゲーム
と言い切れない深さを誰もが感じているせいだろう。

 「囲碁は為悟だ」と言ったのは徳川十五代将軍慶喜だ。彼は碁を人生
や世界を理解する哲学と思っていたらしい。因に当代の名誉棋聖(藤沢
秀行)は「無悟」の書で良く知られている。その深い境地には及ばぬと
してもアマ碁きち連もまた、多かれ少なかれ哲学者かも知れない。

 碁とは何か。親しい棋友とのそんな話もまた楽しい。

              日本棋院「囲碁手帳」より



●「意欲」
☆まず「強くなりたい」と強く思うこと。
 但し、「強くなりたい」と「勝ちたい」は違う。

☆目先の勝利にこだわって愚形、悪形、インチキ手を連発するなどは愚の骨頂。
  たとえ負けても本手を打つ強い意志を持ちたい。

☆ダンゴ石を逃げて勝つよりダンゴ石を作らぬ工夫を心掛けよう。

              日本棋院「囲碁手帳」より



●「苦労」
 誰でも苦労しないで上達したい。当然だ。そもそも人類の歴史は
「できるだけ少ない労力で豊かな暮らし」を求める歴史だった。

 しかし、囲碁上達のための努力は果たして苦労か楽しみか。それを
楽しみと感じられる人だけに明日の栄光が約束されているのである。




●「マナー」
 「待った」「口三味線」「碁笥の石をかき回す」は囲碁における
三大マナー違反。しっかり考え、打った着手には責任を持つ。

 盤上の戦いに雑音は無用。碁に対する正しい姿勢と相手の気持ち
を大事にする礼があれば、品位だけでなく段級位も自然に上がるこ
と請けあい・・・・・信じなさい!

              日本棋院「囲碁手帳」より



●「継続」
 コツコツと地味な努力を重ねる。実はこれ以外に上達の道はない。

  スポーツ選手が毎日走るように、基本を反復練習しよう。

  初級詰碁や手筋の本など、時々読み直すだけで以外な発見が
  あるかも・・・・

              日本棋院「囲碁手帳」より


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